内閣経産委員会連合審査会において、日本がイノベーションを通じて世界でプレゼンスを発揮するための経済安全保障の取り組みについて議論を行いました。
文部科学委員会所属の議員として、JAXAの強化や宇宙分野の産業集積の重要性を指摘し、その上で、経済安全保障重要技術育成プログラム(Kプログラム)の進捗状況を確認しました。
また、セキュリティクリアランス制度の導入後の課題として、民間企業が保有する機密情報の取り扱いに関するルールメイキングの必要性を指摘しました。さらに、クリアランスホルダーの処遇改善や、営業秘密の保護強化、外国資本による日本企業買収時の施設クリアランスの対応などについても議論いたしました。
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いよいよポスト冷戦期が終わりを迎えようとしている中、この世界各国が新たな経済・社会モデルを模索している段階だと思います。
そういった中で、我が国日本が世界の中でしっかりとプレゼンスを発揮するためには、やはりイノベーションが欠かせないと思います。とりわけ、私は文部科学委員会にも所属をしておりますので、かねてより、科学技術分野におけるイノベーションのためには「JAXAの強化」「宇宙分野の産業集積」と常に発信をしてまいりました。
加えて「JAXAもアメリカにおけるDARPAのような組織や予算規模を目指していかなければ、日本が世界と戦っていけないのではないか」とこれまで発信を重ねてまいりました。
その上で、今回の経済安保推進法案においても先端的な重要技術の開発支援に関する制度が入っています。官民連携そしてシンクタンクなど現在の進捗についてお答えいただきたいと思います。
経済安全保障推進法に基づく指定基金により運営される経済安全保障重要技術育成プログラム、いわゆるKプログラムでございます。
こちらは内閣府主導のもと、文部科学省および経済産業省等と連携し、我が国における経済安全保障の確保強化のため、AI、量子宇宙、海洋等の技術分野に関して先端的な重要技術の研究開発を進めるものでございます。
これまでに第1次研究開発ビジョンで27の技術を、第2次研究開発ビジョンにおいて23の技術を追加したところでございます。これによりまして、この50の支援技術支援対象技術についてJSTおよびNEDOにおいて順次公募採択の手続きを実施しております。これまでに28件の提案を採択したところでございます。
また、このKプログラムにおきましては、研究開発プロジェクトごとに指定基金協議会というものを設置しておりまして、関係省庁や企業、アカデミアの方々にご参画いただき、研究開発の推進に有用なニーズ情報を共有いただくと、いわゆる伴走支援をしっかりと行っていくということとしております。
これまでに11件の協議会を設置開催しております。引き続き関係省庁と密に連携しながら、本プログラムの着実な推進に努めてまいりたいと思います。
とりわけ宇宙分野の産業集積、私はこれ極めて重要だと思いますし、日本がリードしていける端緒がある産業だと思っておりますので、ぜひしっかり頑張っていただきたいと思います。
続いて、斎藤経産大臣に質問させていただきます。今回のセキュリティクリアランス制度ですけれども、これが法案として成立した後、積み残したものは、やはり民間事業者が保有する情報に対するセキュリティクリアランス。ここはしっかり議論していかなければならないなと感じています。
実際、アメリカにおいてはCUI(Controlled Unclassified Information)※①という言葉で表現されていますが、日本の有識者会議の最終取りまとめにおいても、「CUIについて検討」という事項が記されております。
そもそも民間事業者にとって、営業秘密を管理していくのは当然です。ただ現状、日本の不正競争防止法を見ても、民間企業の中でイタチごっこが繰り返されているような様子も否めません。民間企業にとって経営が極めて自由であることは尊重されなければなりません。一方で、経済安全保障推進法が制定されるように、世界情勢が大きく変化している。社会経済構造も大きく変化をしている。急速に社会が変わっていくときに、どうやって国と産業や企業が連携を深めていくか、ディフェンス力をどう高めていくかということは極めて重要だと認識しています。
そこで大臣にお伺いしたいのが、日本においても、民間事業者が保有する情報に対するセキュリティクリアランス、つまりCUIの様なルールメイキングが必要だと考えていますが、経済を所管される大臣として見解をお答えください。
※①:CUI(「管理された非機密情報」と訳される米国政府が定めた情報区分。米国各政府機関が取り扱う安全保障および原子力に係る情報のうち、機密(Classified)指定には至らないが適切に保護すべき情報を指す。
まず冒頭、今おっしゃいましたように、DX・GXといった技術革新のスピードがかつてないほど高まっている中で、さらに国際間の競争が激化してるような状況においては、民間事業者が保有する技術について金村委員がお持ちになっている問題意識というものは私も共有をするものであります。
今ご審議いただいているセキュリティクリアランス制度により、まずは政府が保有する重要経済安全保障情報を民間事業者に提供するための制度、これは整備されることになります。これによって政府保有情報が民間企業に提供されれば、日本企業の国際的なビジネス機会の確保、拡充、ひいては国際競争力の向上にも繋がるものと認識をしてますので、まずは本制度をしっかり運用していきたいと思っています。
その上で、ご指摘の民間事業者のみが保有する情報につきましては国が保全措置を講ずべきかどうかに関わらず、一般的に民間事業者自身が営業情報や技術情報の保全を強化することで、致命的な企業価値の毀損リスクを低減するのみならず、企業への信用信頼、業績等の向上を通じて企業価値の上昇に繋がるものと認識をしています。
その上で、民間保有情報であってかつ、国として保全が必要と考えられる情報、この情報の取り扱いにつきましては、高市経済安全保障担当大臣のもとで開催された有識者会議の最終取りまとめにおきまして、国が明確な指針等を示していくことの妥当性を含めて、検討を進める必要があると言及をされております。
経済産業省としても、今後、こうした民間保有情報の保全のあり方に関する政府全体の議論にもしっかり貢献をしていきたいと考えています。
1企業1経営者で本当は決断したいけど、なかなか進められないものっていうのは、大小関わらずいくつもあると思います。そういう意味では、国が率先して制度設計していくことで、実は新たな経営の視点が広がってくると思います。ぜひご検討いただきたいと思います。
ちょっと順番前後いたしますが、クリアランスホルダーについて高市大臣にお伺いさせてください。
アメリカにおいてでは、クリアランスホルダーの市場が活況だと聞いています。クリアランスホルダーは職責も大変重たいと思いますし、専門性も極めて高いと認識してます。しかし、このクリアランスホルダーの人たちが重要な責務を負っているにも関わらず所得に反映しない。そうすると、結局は絵に描いた餅で、なかなかその専門職が生きてこないケース多々あると思うんですね。そういう意味では、このクリアランスホルダーの労働市場における価値をどう高めていくのか、クリアランスホルダー自身の所得をどう高めていくのか、担当大臣として見解をお聞きしたいと思います。
本法案検討の過程で有識者会議の最終取りまとめでも、「諸外国はこのような信頼性の確認を受けることで、処遇面も含めて社会での活躍の幅が広がるものと認識されている」と指摘をいただいております。
「諸外国におけるこのような認識の広がり」というのは、クリアランスの保有はもちろんのことですが、それだけではなくて業務上の能力、全体として評価して適切な処遇がなされている結果じゃないかなと思っております。
本法案をお認めいただきまして、政府として制度を普及させていく段階におきまして、諸外国におけるこうした認識も踏まえながら、その情報保全の重要性ということに対する理解が広く醸成されるように説明を尽くしてまいりたいと存じます。
我が会派の前原誠司さんも、「情報を守るのは非常に大切だ」「ただ政治家はよく喋ってしまう」と、そういう委員会での発言もありました。
秘密を守ることの価値を日本の中で高めていくことで、結果としてクリアランス資格を取得した人たちが、職責に見合う所得ややりがいに結びつくと思います。ぜひ、この労働市場の視点も持っていただきたいなと思います。
その上で、今日もいくつか質疑されておりましたが、機密性の高い情報については、「産業スパイ」にも取り組んでいかなければならないと思います。重ねてになりますが、これからの日本を未来を見たときに、科学技術の発展は疑う余地がないと思います。そういう意味では、国、それから民間企業がしっかり連携を深めて、実際にイノベーションを担うであろう民間企業のディフェンス力をしっかり高めていかなければならないと考えています。
一方で、既に「日本はスパイ天国」なんて表現されたり、実際に技術者の流出っていうのは非常によくある出来事です。ライバル企業に転職して機微情報を流出させたり、転職したその転職者自身が新しい企業に転職したときに「お土産を持参する」なんていう表現を使われたりしています。
情報漏えいや技術者の流出は、企業努力と制度設計によって未然に防いでいかなければならないと思いますが、今の実際の取り組みを教えてください。
民間が保有する機微情報でありますけれども、現行法では不正競争防止法がございまして営業秘密の侵害行為について民事上の損害賠償請求ですとか罰則を定めております。ただ、営業秘密の侵害事件の摘発は近年増加しておりまして、その要因としましては金村委員のご指摘があった近年の雇用の流動化も影響してるんじゃないかというに思います。転職時に、従業員が以前在籍していた企業の営業秘密を持ち出す事例が増大してるという状況も承知しております。
このようなリスクを防ぐためには、中小企業を含めた多くの企業と従業員に対して、営業秘密の持ち出しが不正競争防止法違反になるということを認識してもらうということが大事であります。
その上で、情報漏えい対策を実行してもらうべく、経済産業省として普及啓発、周知徹底を図ってるところでございます。これまでも、「営業秘密の管理に関するわかりやすいハンドブック(手引き)の作成・配布」「警察署などの関係府省や産業界との情報共有を目的とした営業秘密官民フォーラムの開催」「工業所有権情報研修会における中小企業等の営業秘密等の情報漏えい防止対策の相談窓口の設置」など、企業向けの相談体制の整備といった取り組みを行ってるとこでございます。引き続き適切に対応してまいりたいと思っております。
今お伺いして、大企業はいろんな対策が取れると思うんです。ただ、中小零細でコアな技術を担っている企業はなかなか対策が取りにくい。それだけ潤沢な資本力を持っていない企業もありますので、しっかりと技術流出を防ぐために努力をいただきたいと思います。
最後に、高市大臣に質問いたします。
セキュリティクリアランスの議論、それから経済安保推進法案、いよいよ、世界が大きく変化し始めていることを実感いたします。世界の変化に取り残されることなく、日本がトップランナーになるべくこれからも頑張っていこうと私自身も思っています。
その上で、施設クリアランス※②のところで一つ質疑をさせてください。「施設クリアランスを保有する民間企業が外国企業に買収をされる」あるいは「施設クリアランスを提供した段階と株主構成が大きく変わる」こういったことは十分想像できると思うんですね。実際に、そういう事象が起きてしまったとき、民間企業の情報漏えいについてどのようにお考えか、お答えください。
※②:施設クリアランス(重要経済安保情報の保護のために、必要な施設設備の設置などを定める政令の基準に適合している事業者かどうかを評価する仕組み)
今ご指摘いただいたようなケースについてましては、外国企業に買収された時点で適合事業者の基準を満たすかどうか、既存の契約関係を続けることが適当かどうかを検討することとなります。
既に行政機関から提供を受けている重要経済安保情報につきましては、資本関係の変動があっても引き続き本法案の規律がかかり続けます。例え当該企業の役職員であっても、「適正評価で漏らす恐れがないと認められている」かつ「当該行政機関との契約において定められた範囲の者」でなければ情報にアクセスすることはできません。
万が一、それ以外の者に伝えればそれは漏えい行為として処罰の対象になりますし、この当該漏えい行為が会社の事業に関して行われたら法人も処罰の規定の対象になります。買収に伴って役職員の入れ替わりがあったとしても、既に重要経済安保情報を取り扱っていた契約職員は退職後も法制度の守秘義務がかかります。
新たに任用される役職員が重要経済安保情報を取り扱う場合には、やはりその適正評価をちゃんと受けていただいて漏えいした場合には処罰の対象になります。その適正評価に当たりましては外国資本との関係も12条2項1号の重要経済基盤毀損活動との関係の考慮要素となり得る場合がございます。
はい。時間になりましたので終了させていただきます。ありがとうございました。
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